ページの先頭へ

                                            トップページに戻る
少年リスト  映画(邦題)リスト  国別(原題)リスト  年代順リスト

Der junge Häuptling Winnetou 酋長の息子ヴィネトゥ

ドイツ映画 (2022)

もともと西部時代を描いた映画で、少年が主役級で出てくる映画は数少ない。これまで紹介した中では、『シルバー・サドル/新・復讐の用心棒』(1978、イタリア)、『3時10分、決断のとき』(2007、アメリカ)の2本しかない。今後、紹介できるものは、端役だが、『エル・トポ』(1970、メキシコ)、『Si Può Fare... Amigo(やれるぞ、アミーゴ)』(1972、イタリア)、『Blauvogel(青い鳥)』(1979、東ドイツ)、西部劇のテーマパークだが、『800発の銃弾』(2002、スペイン)くらいしか思い当たらない。西部劇の主役はガンマンで、子供は銃を撃てないので、少ないのは当たり前なのかもしれない。そんな中にあって、この映画は、アパッチと白人の12歳の少年を主人公に据え、極悪人の悪役を登場させ、西部劇の時代設定としては結構早い段階での情景を、アクションを交えて上手に映画化している。アパッチまでが流暢にドイツ語を話しているのには違和感があり、子供向きではあるが、それなりによくまとまっていて、脚本上の破綻はない。この映画より半世紀弱前に作られた『青い鳥』も少年が主役の本格的な西部劇で、ドイツには、そうした変わった伝統があるのだろうか? この映画で、よくできていると思うのは、片方の少年が酋長の1人息子、片方の少年が盗賊団に育てられた盗癖のある孤児という 両極端のパーソナリティーが主役で、最初は後者が圧倒的に悪いのに、次第に立場が逆転していき、荒っぽい社会に揉まれた少年の方が、策略を駆使して、かつて育ててくれた盗賊団のボスを倒すまでに成長する脚本は面白い。この映画は、2022年8月11日にドイツで公開され、ドイツ語の字幕だけが存在する。結構、意表を突いた(辞書にない)表現があり、訳出には苦労した。

50-60人規模のアパッチの小部族の酋長の一人息子がヴィネトゥ。妹はチョウ・チ。母は死に、父はヴィネトゥに期待をかけている。しかし、ヴィネトゥが12歳の年の秋。いつもなら現れるハズのバッファローが、今年は1頭もいない。バッファローを食べて冬を越す平原アパッチにとって、これは死活問題だ。この難題が評議会で話し合われる前の晩、早く一人前の戦士として認めて欲しいヴィネトゥは、父の命令で見張りに就いていた大人の戦士に嘘を付き、役割を交代する。すると、白人少年の馬泥棒が現われ、それに気を取られている間に、大切な食料庫が焼けてしまう。ヴィネトゥは父を失望させ、馬泥棒のトム・シルバーと一緒に、ティピに1日監禁処分となる。翌日の評議会では、若手のナギ・ニタの意見が通り、祖先の地を離れて、新しい土地を探すことになる。一方、ヴィネトゥは、トムからバッファローに居場所に関する情報が町にあることを知り、トムを縛って馬に乗せ、町まで行こうと勝手に決める。町では、詐欺師の男を脅して貴重な情報を得られたが、元々トムには、お尋ね者の賞金がかけられていたため、西部に向かう裕福な母子の余分な口出して、シェリフに追われる身となり、隠れた馬車が口出しした母親のせいで暴走を始め、崖から転落。ヴィネトゥの活躍で、トムは転落の直前に逃げ出すことができたが、シェリフは、2人とも馬車ともども崖から落ちたと思い込む。酋長は、ヴィネトゥのティピを訪れ、2人が町に行ったこと知り、ナギ・ニタに連れ戻すよう指示する。しかし、彼が町でシェリフから聞かされたのは、転落死の話だった。一方、詐欺師から聞き出した情報は、トムのかつての育ての親の極悪人トッドが、アパッチを追い出して、その土地にある金を奪うためにバッファローをどこかの谷の奥に囲い込んだというものだった。そこで、トムは、ヴィネトゥをトッドの隠れ家に案内する。そして、妹はチョウ・チからもらった薬を使って、谷の名前を聞き出す。2人が谷まで行き、いざ、バッファローを解放しようとすると、それを事前に察したトッドが現われ、2人を拘束しようとする。そうされれば、バッファローの解放ができなくなるので、トムは、思い切った手に出る…

ヴィネトゥ役は、ミカ・ウルリッツ(Mika Ullritz)。2008年生まれ。スペインでのロケは2020年8-10月なので、撮影時11-12歳。2016年から、TVを中心に活躍してきた子役。トム・シルバー役は、ミロ・ハーフ(Milo Haaf)。同じく2008年生まれなので、撮影時11-12歳。ミカと違い、これが、映画、TVを含めて初出演で主役。ミカは、酋長の息子役なので、表情が乏しくなるのはやむを得ない。最大の見せ場もスタントマンなので、題名にもなっている主役の割にはパッとしない。それに対し、ミロは、盗っ人トムから始まり、最大の見せ場の「裏切り者を装う場面」を含め、表情は豊かで、はつらつとしている。

あらすじ

平原アパッチの小部族(40-50人)の中の2つの子供のグループ(各3人)が競争をしている。そのうちの1つのグループには、酋長の息子ヴィネトゥと娘チョウ・チが入っている。2つのグループは、ほぼ同時に馬の柵をくぐり抜け(1枚目の写真)、水溜りに架けた2本の丸太を渡した橋を渡る。ヴィネトゥが最初に渡り、次にチョウ・チが渡る。その時、対戦相手がようやく橋に辿り着く。ところが、3人の目のドジなトカラ(酋長の家族ではない)が丸太から足を踏み外し、水溜りの中に落ちてしまう。ヴィネトゥは、岸まで行って引き上げようとするが、ドジはどこまでもドジなので、上がることができない。対戦相手は3人とも渡ってしまったので、ヴィネトゥはトカラを水溜りの中に置き去りにし(2枚目の写真、矢印)、弓矢の置いてある場所まで対戦相手のトップと同時に着くと、弓を引き絞って矢を放つ(3枚目の写真)。僅かに先に放った相手の矢は的を外れ、ヴィネトゥの矢は中心に刺さる。

ところが、2つのグループを前にした女性長老(呪術師)が、勝利の羽を渡そうとしたのは相手チームの射手。ヴィネトゥは、「そんな。タザは的を外しました」と抗議するが、長老は、「タザは仲間を見捨てなかった」と言って、羽を渡す。そして、長老は、毛利元就の「三矢之戒」とそっくりなことを始める。まず、1本の矢を取り上げ、「1本の矢は、簡単に折れる」と言い、2つに折り、それをヴィネトゥに見せる(1枚目の写真)。次に5本の矢を束にして手に持ち、「たくさんの矢だと、折ることができない。一緒だと強くなる」と言う(2枚目の写真)。そして、遠くから音がしたので、「お行き。戦士たちが狩りから帰って来た」と全員に言った後で、ヴィネトゥを呼び止める。そして、こう諭す。「私には、あなたの中に民(たみ)を導く火が燃えているのが見える。将来の酋長は、火の近くを飛ぶ蛾のように、控えることを学ばねばならない。自らの幸せよりも、民の幸せのために尽くす。その判断が、部族の平和を確かなものにするのです」。ヴィネトゥは、「でも、判断が正しいか、間違っているか、どうしたら分かるのですか?」と質問する。「あなたの心を信じるのです」(3枚目の写真は、そう言われた時のヴィネトゥ)。

バッファロー(アメリカバイソン)を狩りに行った男達が戻って来て、部族員を前に、酋長が結果を報告する。「わしらは得るものなく帰ってきた。落葉月には狩り場を徘徊するはずのバッファローは どこにもいなかった」(1枚目の写真)。ヴィネトゥの妹のチョウ・チが、部族民を代表して質問する。「バッファローの肉と皮なくして、長い夜の月を どのようにして生き延びればいいのですか?」。「どうするかは評議会で決める」。集まった部族民が解散すると、酋長の前に寄って来たヴィネトゥとチョウ・チに向かって、彼は父親らしく、「お前たちに会えて嬉しい」と言う。ヴィネトゥは、「バッファローはどうしたのです? 消えることなどあり得ません。進路から外れたところも探したのですか?」と、失礼な質問をする。そこに、一番の部下のナギ・ニタがやって来て、デーツとナッツを集めるために人を送ると言い、酋長は、それに感謝し、イシ・カイ・ナイが夜の見張りを引き継ぐと伝える。ナギ・ニタがいなくなると、ヴィネトゥは、「僕が見張れます」と提案するが、「経験が必要だ」とバッサリ。「僕は、年長者と同じくらい熟練していますし、酋長の息子です」と背伸びする(2枚目の写真)。「それだけで、お前は熟練した戦士になれるのか?」。「助けたいだけです」。「ならば、するがよい」。そして、命じられた仕事は、馬の囲いの中の糞の掃除(3枚目の写真、矢印は糞。他にも一杯落ちている)。チョウ・チは、柵に座って、「りんご(糞)は放っておくと増えるから」と慰めるが、ヴィネトゥは、「父は、もっと大事な仕事を与えてくれると思った」と、不満を口にする。「まだ、準備ができなないと思っていらっしゃるのよ」。「なら、僕が証明してみせる」。

夜になり、小高い場所の焚き火を前にして、イシ・カイ・ナイ(女性)が見張っている。そこに後ろからヴィネトゥが近づいたので、イシ・カイ・ナイは斧を振り上げるが、ヴィネトゥだと分かり、「なぜティピに入らないの?」と訊く。「父は、あなたと入れ替わるよう言いました。気が変わったから。どうぞ、休んで」と嘘を付き、見張りを交代する。そして、じっと座って待機していると、囲いの中の馬が音を立てたので、立ち上がる(1枚目の写真、矢印)。その時、顔を布で覆った白人の少年が、こっそりと馬の囲いに入って行き、白い馬を盗もうと、柵につないだロープを解く。すると、背後に回ったヴィネトゥが、弓を構えて 「放せ、馬泥棒」と命じたので、びっくりして振り返る(2枚目の写真)。その時、別の馬がいなないたので、ヴィネトゥは、他にも泥棒がいるのかと、そちらを振り向き、その隙に少年は逃げ出す。ヴィネトゥは、すぐに追いかける。そして、少年の背後から、弓を構えて 「おい」と言ったので、少年は手近にあった松明を手にすると、それで対抗しようとする(3枚目の写真)。

少年は、ヴィネトゥに向かって松明を投げて逃げ出し、ヴィネトゥはすぐに後を追うが、経験がないので、松明の処理を忘れる〔落ちていた藁に火が燃え移る〕。少年は、一旦は、藁で造った樽の中に隠れるが、すぐに蓋を取って逃げようとする(1枚目の写真、矢印は蓋)。しかし、それを予期して地面に伏せていたヴィネトゥが、三度目に弓を構えて 「止まれ」と命じる。少年は、まだ樽の中にいたので、逃げようがなく、両手を上げて、「分かった。引き分けにしようよ」と 調子のいいことを言う(2枚目の写真)。「だめだ」。ヴィネトゥは、少年の両手をロープで縛るが、最悪の事態に最初に気付いたのは、少年の方。「わぁ、あっちが火事になってるぞ」(3枚目の写真、矢印、背中の方がヴィネトゥ)。それに対してもヴィネトゥは嘘だと思い、女性の部族民の 「私たちの食料が!」の叫び声で、ようやく事態に気付く。飛び出て来たナギ・ニチが、水を汲みに行くよう指示した後で、振り返って少年を見つける。「こいつは何者だ?」。「僕は、トム・シルバー。これ単なる誤解なんです」。

翌朝、全焼した食料庫を前に、部族民全員が集まり、酋長は、ヴィネトゥを叱責する。「お前は、イシ・カイ・ナイに嘘を付いた。さらに悪いことに、警報を発しなかった」。「一人でできると思ったのです」。「食料が燃えたのだぞ!」(1枚目の写真)「バッファローがいなくなり、冬が近づいている。お前には責任能力などない」。そして、今度は、ナギ・ニタにロープを握られたトムを振り向くと、「そして、お前。白人の血で土地を汚し、和平協定を危うくするようなことはせん。馬泥棒は保安官に引き渡す。ヴィネトゥ、お前の責任だ。奴と一緒にティピに行け。お前の顔は、次の月まで見たくない」。ヴィネトゥとトムは、ティピに監禁される(2枚目の写真、矢印はトムの手を縛ったロープ、ヴィネトゥはナイフで木の棒を削っている)。そこに、チョウ・チが食べ物の入った木の椀を持って入って来る。そして、兄に差し出すが、ヴィネトゥは食べるのを拒否。チョウ・チが そのまま出て行こうとすると、トムが 「ねえ、女の子。僕も食べたいな。お腹、空いてるんだ」と声を掛ける。チョウ・チは、木の椀をトムのところに持って行くと、「あなた、熊みたいには見えないけど、日なたに長くい過ぎて死んだオポッサムみたいね」と言いながら、椀の中身を見せる。中に入った黄緑色の練り物を見たトムは、「考えてみたら、お腹すいてないや」と言って、食べるのを遠慮する。「でも、ありがとう」。「私、チョウ・チ。ヴィネトゥの妹よ」。「ごめんなさい。嬉しいです。僕、トム・シルバー」。ここで、ヴィネトゥが口を出す。「そいつから離れるんだ。馬泥棒だぞ」。トムは、「彼って、いつもあんな風に機嫌悪いの?」とチョウ・チに訊く。チョウ・チは、兄のそばに寄ると、「バッファローがいたら、父はあれほど怒らなかった。許してもらえるわ」と、慰める。「僕は自分が許せない」(3枚目の写真)。

トムは、「バッファローがどうかしたの?」と、チョウ・チに訊く。「群れは、私たちの土地を通って、大いなる水に行くの。でも、今年は現れなかった」。「もし、僕がどこにいるか知ってたら? 僕、聞いたんだ」。それを耳にしたヴィネトゥは、ナイフを持ったまま立ち上がると、トムに襲いかかり、ナイフを首に当て、「何を聞いた? どこで? 誰が?」と問い詰める(1枚目の写真、矢印はナイフ)。トムは、「言葉の切れ端、酒場、酔っぱらい」と答える。「そいつの名前は? 『酒場』って何だ?」(2枚目の写真)。「これ、ほどいてよ。そしたら、連れて行くから」。ヴィネトゥが、ナイフでロープを切ろうとすると、チョウ・チが、「だめよ、ヴィネトゥ。父と話して」と、早まるのを止める。

ヴィネトゥは、評議会が行われている聖なる洞窟に向かう。一方、ヴィネトゥがいなくなったティピでは、チョウ・チが吹矢の先端に2種類の毒を付けて 筒にセットしている。その隙を狙って動き出したトムに向かって、チョウ・チは振り向きもせず、落ち着いた声で、「やめた方がいいわよ」と警告し、吹矢をトムに向ける。トムは、「分かりました」と、直ちに元に戻る。聖なる洞窟では、呪術師でもある長老が、霊感状態になって、「バッファローが見えない。影が邪魔をしている。鳥の形の影。鷲か… あるいは、恐らく… そう、大きなカラス〔あとで、ある意味、正しいことが分かる〕。ナギ・ニタは、酋長に、「啓示は明らかです。呪い… ティピを畳むべきでしょう」と発言する(2枚目の写真)。酋長は、「この土地は、我らが部族と結びついておる。我らが祖先は、ここに最後の安息の地を見い出した。我らが去った後、誰が祖先の墓所と聖なる洞窟を守るのだ?」と問いかける。ナギ・ニタは、「我らが部族の未来は、過去よりも大切ではありませんか? バッファローがいなければ長い夜の月を生き延びることはできないしょう」と言う。長老は、「ナギ・ニタは正しい。我らが民の生存が最も大切です」と言う。酋長は、「月が半分の大きさになってもバッファローが来なければ、ティピを畳む」と決断する。それを隠れて聞いていたヴィネトゥは、「だめです!」と声を上げる。「お前は 評議会を妨害するのか?」。「父上、我々はこの土地を離れる必要はありません。白人の少年は、バッファローがどこにいるか知っています」(2枚目の写真)。これに対し、下心のあるナギ・ニタは、「ヴィネトゥは間違った奴らを信じております。白人の奴らの目的は唯一つ。我らを襲い、土地を盗むことです」と反論。ヴィネトゥは、「でも、もし、彼が、僕たちを助けられたら?」と最後の訴えをするが、父は、「白人の少年は、助かりたいがために、二枚舌で話す。今日、お前は、二度も私を失望させた。ティピに戻るのだ」と命じる。そして、彼のティピの前には見張りが付けられることに。ティピに戻ったヴィネトゥは、トムの言葉を信じて、どうしても『酒場』とやらに行って、『酔っぱらい』からバッファローの場所が知りたくてたまらない。そこで、ヴィネトゥは、トムの両手を縛ったロープに、自分と結び付けて逃げないようにするロープを別に付ける。親切なチョウ・チは、見張りを通り抜けるために、ティピから外に出ると(3枚目の写真、矢印)、「ほら、あなたも何か飲まないと」と言って木のコップを渡す。それを飲んだ見張りは、10秒以内に意識を失うが、記憶に残ったことをペラペラとしゃべる。外に出て来たヴィネトゥに、「“銀蛙のキス” よ。寝ている間に舌をほぐすの」と説明し、「もっとあるわ。使えるかも」と言って渡す。

トムは 縛られたまま、ヴィネトゥの後ろに跨る。辺りは真っ昼間なので、追っ手がかからなかったことが分かるが、見張りはどうしたのだろう? なぜ誰も気付かなかったのかが、最後まで疑問として残る。トムは、一人でしゃべっている。「君の古き良きイアホロ〔馬の名前〕に反対なんかしないけど、もっと速い馬の方が良かっんじゃないかな。でもまあ、決めたのは君だから」「早ければ、5時間でリオ・サントスに着くよ」「話すの、好きじゃないんだ。だよね? 話さなくていいから。僕だって黙ってられる」(1枚目の写真)「結局、僕たちは、お互いのこと知らないし。 ほとんど何も」。しばらく乗っていて、「言いたくないけど… 行かなきゃ」。ヴィネトゥが、首を横に振ると、「分かった、いいよ、ここで、しちゃうから」。これで、トムは 手を縛られたままだが、馬から降りて小便をさせてもらえる。トムが、小便をしながら、背中を向けているヴィネトゥの斧に目を留め、取ろうと手を伸ばすと、ヴィネトゥが振り向いて 「終わったか?」と訊くので、慌てて、「はい、終了」と誤魔化す。そして、「帽子がないとすごく暑いね。インディアンは汗かくの?」と訊く(2枚目の写真)。「青白い顔〔白人〕は、血を出すのか?」。さらに、旅は続く。「君たちの名前には全て意味があるって本当?」。当然、返事はない。「『はい』の場合、ヴィネトゥって どういう意味? 『気難しい狼』? それとも、『不機嫌な鷲』? それとも…」。ここで、ようやくヴィネトゥが答える。「燃える水」(3枚目の写真)。「でも、水って燃えないよね」。ヴィネトゥは溜息をつく。「何か、素敵そうだね」 。

リオ・サントスの町に着いた2人は、町外れの小屋に馬を縛る。ヴィネトゥは、トムに、「バッファローはどこだ? サルーン〔酒場〕について知ってる奴は?」と訊く。トムは、間違いを訂正する。「サルーンは名前じゃないよ。そこに男がいるんだ。ハンクって名の」(1枚目の写真、矢印はトムを縛る縄)。「行くぞ。ハンクを探す」。「ちょっと待って。酒場に行くのは 僕の方がいいと思うよ。ここじゃ、インディアンは好かれてないから… つまりね、歓迎されないんだ」(2枚目の写真)。そう言うと、トムは、両手を差し出す。ヴィネトゥは嫌がるが、「もっといい案ある?」と訊かれ、仕方なく入れ替わる。そこから先の町の中は、両手を縛られたヴィネトゥを、トムが引っ張って歩く(3枚目の写真、矢印はヴィネトゥを縛る縄)。

トムは、途中で顔を合わせた髭剃り男に、「ハウディ。これ馬泥棒。僕が捕まえたんだ」と自慢する。怒ったヴィネトゥは、トムの足を蹴飛ばして 「やり過ぎるな」と注意する。途中で、西部に向かっている金持ちの母と息子がいて、息子が、「ママ、見て、インディアンだ」と喜ぶ。一方、母の方は、お尋ね者への賞金の紙を見て、トムの方に注目する(1枚目の写真、矢印)〔この紙の絵と、トムの顔は全く違うのに、単なる旅行者がどうしてトムだと断定できたのだろう?〕〔それにしても12歳の少年に1000ドルとは、いくらなんでも高すぎる(現在の1万ドル以上)〕。トムは、「SALOON(酒場)」と掲示された建物に近づくと、酔っ払った男が酒場から出てきて倒れ込み、トムはその帽子を拝借する。トムとヴィネトゥが中に入ると、インディアンを連れてきたトムに1人の男が文句をつける。そこに、店の女主人が現われ、「やっと来たわね」とトムに言い、その他の客には、「何よ、この子たちは厩舎で手伝うのよ」と説明する(2枚目の写真、矢印は2人)。女主人は、2人を自分の部屋に連れて行くと、トムに向かって、「正気なの、友だちを連れて堂々と現れるなんて」と呆れる〔お尋ね者なので〕。2人は、「僕たち友だちじゃない」と同時に否定し、ヴィネトゥは見せかけだけの縄を外す。女主人は、トムを息子のように可愛がっているらしく、「よく来たわね」と言って抱きしめる(3枚目の写真、矢印は、もう縛っていないロープ)。そして、「トム、リオ・サントは危険よ。あんた、多くの住民に怨まれてるから」と注意する。「すぐ町を出るけど、その前に助けてよ。ハンク、どこにいるか知ってる?」。「あの詐欺師? 奥の部屋でポーカーしてるわ」。ハンクはカード詐欺がバレて階段から突き落とされたところだった。ここで、如何にもアメリカの西部劇を思わせる店のお客全員を巻き込んでの喧嘩が始まり、2人はテーブルの下に隠れる。その間にハンクはこっそり酒場を抜け出したので、2人も跡を追って外に出る。ハンクは、町で唯一の旅籠(はたご)に上がって行く。

2人は、まず、町外れの馬を繋いだ場所に行き、トムの両手がもう一度縄で縛られる。そして、ヴィネトゥは弓を手にして出発。その頃、賞金目当ての女性は、シェリフの看板が掲げられた場所に行き、“お尋ね者トム” の紙を見せ、数分前に通りをこっそり歩いて行ったと通報する。女性の子供は、さらに、インディアンと一緒だったと余分なことを付け加える。その話を受けて、シェリフは 大声で部下を呼び、「トッドのチビイタチが町にいるぞ」「この辺のどこかにいるに違いない」と捜査開始を告げる(1枚目の写真)。その頃、2人は、ハンクが入って行った “建物の2階にある旅籠” 目がけて外階段を駆け上がり、中に入る。一方、旅籠の廊下では、トムが、「ここにある部屋〔数部屋しかない〕のどっかにいるに違いない」とヴィネトゥに話す(2枚目の写真、矢印はトムを縛ったロープ)。一番奥の部屋をノックすると、ハンクが 「誰もいないよ」と返事をしたので、2人は確信してドアを開ける。ハンクはベッドの影に隠れるが、トムだと分かると、安心して姿を見せる(3枚目の写真、矢印は縄)。トムの質問に対し、ハンクは、「俺が、バッファローの行方を知ってたとしても、なんでお前に言わにゃならん?」と、報酬を要求する。トムは、酒場のみんなにハンクの居所を教えに行くと言って、廊下に出るフリをしたので、ハンクも折れて情報を与えることにする。その頃、シェリフの部下の一人は、旅籠の最初の部屋のドアを開け、そこで女性に体を洗ってもらっていた町長に怒鳴られる。その際、「最初は 2人の腕白小僧、今度は 貴様だ!」と言うので〔トムも、最初は、この部屋を覗いた〕、トムがこの旅籠にいることが分かり、部下はさっそくシェリフを呼ぶ。ハンクの話を聞いたトムは、「トッドおばさんが背後にいる」と困ったような顔で言うと、ハンクは、「そうみたいだな」と言う。ヴィネトゥが、「その女、誰だ?」とトムに訊くと、ハンクが、「トッドは女じゃない。奴には、関わらない方がいい… “おばさん” とはな」と忠告する。トムは、ヴィネトゥに、「彼は、この辺りで一番のお尋ね者なんだ」と教える。ヴィネトゥはトムに 「君は、トッドを知ってるな?」と訊く。ハンク:「トッドと奴の仲間は、トムの家族みたいなもんだった。そうだろ?」。そう言うと、「幸運を祈る」と言って部屋から退去する。

バッファローの情報が分かったので〔この段階で、情報の内容は観客に知らされない〕、ヴィネトゥはトムの縄をほどき、「僕を、そのトッドのところに連れて行けよ。どこにいるか知ってるんだろ?」と言うが、トムは、ここまでが取引だと、トッドとの関与を断る。その時、ドアが開いてシェリフと部下が顔を見せる。トムは目の前でドアをバタンと締め、鍵を掛ける。ヴィネトゥは、「あいつら、君に何の用だ?」と訊く。「僕は盗っ人だ。牢に入れられる」。そう言うと、窓から逃げようとする。ドアが足で踏み破られ、鍵が外されたので、ヴィネトゥは手斧を投げ(1枚目の写真、空色の矢印は飛ぶ方向)、小さなシャンデリアをシェリフ達の前に落とし 逃げる時間を稼ぐ。2人は窓から屋根に逃げ、そこから藁束の上に落ちる(2枚目の写真、矢印)。そのあと 旅籠とは反対側に逃げる。ところが、前方に、もう一人の部下がいたので、ちょうど停まっていた馬車に逃げ込む(3枚目の写真)。

ところが、その馬車は、トムのことを通報した “うるさ型” の母子連れの物だったので、母親が 馬車後部のステップを上がって幌を開けると、そこには問題の2人が隠れていて、トムが、黙っててと 口に指を当てる(1枚目の写真)。しかし、容赦のない女性は、けたたましい悲鳴を上げる。そのため、驚いた2頭の馬が馬車を牽いたまま暴走を始める(2枚目の写真、矢印はステップの上に取り残された母親)。馬は、町から出ても速度を落とさず、暴走を続ける。後ろからはシェリフ達3人が追って来るので、逃げ道はない。馬車は、「この先 命の危険、通行禁止」と印のある柵の間を通り抜け、崖に向かって疾走する(3枚目の写真)。そこまで来たシェリフは一旦馬を止める。部下に理由を問われたシェリフは、「この先はアクナ渓谷だ」と告げる〔トムとヴィネトゥは、馬車もろとも深い谷に落ち、死亡するしかない〕

ここから先が、この映画のクライマックス。ヴィネトゥは 「飛び降りないと」と言うが、トムは 「絶対無理」と拒否。ヴィネトゥは、馬と馬車とをつなぐ2本の革帯を2本とも切り離し、「3で、馬に向かって飛べ」と言い、1から3まで数えて左の馬に向かって飛び移る(1枚目の写真、矢印)。トムは、怖くて身動きできずにいる。ヴィネトゥは、2頭の馬を繋いでいる木の棒を切り離し、自分の馬を自由に操れるようにする(2枚目の写真、矢印の方向、右側は木の棒)。そして、馬の向きを変え、惰性で走り続けている馬車の後方に回り、改めて馬車を追いかけ(3枚目の写真、矢印)、トムの真横まで行くと、手を差し出して、「飛び移れ!」と叫ぶ(4枚目の写真)。2人は手を伸ばすが、ヴィネトゥはトムの手を握れない。断崖が迫る中、ヴィネトゥは危険を承知で、もう一度、馬から馬車に飛び移る(5枚目の写真、矢印)。そして、抵抗するトムを引っ張って肩を抱くと(6枚目の写真)、そのまま一緒に飛び降りる。

その直後、馬車は崖から飛び出る(1枚目の写真)。後方から追ってきたシェリフ達は、崖の手前で馬を止める(2枚目の写真)。そして、馬から降りると、「トム・シルバー、安らかに眠れ」と胸に手を当てる〔シェリフがトムにこだわったのは、悪漢のトッドを捕まえるため〕。因みに、余計なことをした子連れの母親は、全財産を自らの馬車ごと失ったことになり、トムにかかった賞金より損害は大きいし、トムは死んでしまったので〔シェリフの考えでは〕、賞金はもらえない。シェリフ達がいなくなった後で、隠れていたヴィネトゥは立ち上がる。トムは、顔にケガをしたが(3枚目の写真)、それ以外には何事もなく助かった。

トムが起き上がってヴィネトゥを見ていると、彼は崖っぷちまで行って足を組んで座ると、平らな石を2つ拾い、それを両手に持って 独自のパターンで打ち鳴らす(1枚目の写真、矢印)。すると、馬車から切り離されていた黒馬2頭が、どこからともなく現れる(2枚目の写真)。ヴィネトゥは、2頭の手綱を握ると、トムに 「じきに日が暮れる。どこに行けばいい?」と訊く。「知るわけないよ」。「ここは、君たちの土地だ。それに、君は出血してる」。結局、トムは、酒場の女主人に頼ることにした。次のシーンは、夜のインディアンの部落。酋長である父は、1日中ヴィネトゥに会っていないので、長老に、「明日、彼に話してみます」と言っている〔眠ってしまった見張りが、報告に行かなかったのはなぜ?〕〔何れにせよ、2人がいなくなったことは、妹のチョウ・チ以外、まだ誰も知らない〕。そして、酒場の女主人の部屋。イスに座ったトムの頭の血を、女主人が布で拭き取ながら(3枚目の写真)〔消毒液を使った生体消毒の起源は1825年のフランスと書いてあったので、女主人は血を拭き取っているだけ〕、「私は、すごく苛立ってるのよ」と、厳しい顔で言う。ヴィネトゥは、知らない単語だったので、「『苛立つ』?」と、トムに訊く。「『苛立つ』ってのは、怒ることだよ」。「事もあろうに、シェリフはあんたたちが死んだって言ったのよ」。ここで、ヴィネトゥは穏やかな顔で口を挟む。「だから、彼はもう、僕たちを探さなない。僕たちは生きている。なぜ『苛立つ』のです?」。「そうね。今夜は、ここで安全よ」。

2人だけになっても、いつもと違い、トムは黙っている。そこで、いつもは黙っているヴィネトゥが、「君は静かだ。これまでになく」と言う。トムは、「ありがとう。僕の命を助けてくれて。あそこまでしなくてもよかったのに」(1枚目の写真)。トムは、ヴィネトゥが首から下げている変わった石に着目する。「その護符の飾りは金なの? なら、かなりの価値があるね」と訊く。「僕にとっては、石にも劣らない価値があるよ。父がくれたんだ。父は、若かった頃、勇気の褒章として、これをもらった。狩の途中で割れ目に落ちた女の人を助けたから」。「その女の人は、君のお母さん?」。ヴィネトゥは悲しそうに頷く。「どうかしたの?」。「数年前に亡くなった。君は? 家族はどうなの?」。「両親… 会ったことなんかない。僕が小さかった頃、いなくなった。トッドが僕を育ててくれた」(2枚目の写真)「1年くらい前、盗みをやってる時、シェリフが現われたら合図するのが僕の役目だったのに、へましちゃった。そして、逃げる途中、ばらばらに」。「なぜ、トッドのところに戻らなかったの?」。トムは、肩をすくめただけ。「あの苛立ってた女の人は?」。「ミス・エリーだよ。どう思う?」。「君が、好きみたい」。「ありえない。他のみんなと同じで、僕のこと盗っ人だと思ってるよ」。「僕たちには、『心と相談せずに判断するな』って言葉がある」(3枚目の写真)。それを聞いたトムは、「僕、トッドがどこにいるか知ってる。彼のところに連れて行くよ」と言い、ヴィネトゥは笑顔になる。

翌日、途中でヴィネトゥが革の水筒に水を汲んでいると、馬から降りたトムが痛そうに歩いてくる(1枚目の写真)〔馬車を牽く馬には鞍が付いていない〕。それを見たヴィネトゥは、「鞍なしは初めてか」と言う。負けん気のトムは、「まさか。なぜそんなこと言うの?」と反論するが、ヴィネトゥは 「今のは、質問じゃない」と言うと、「飲めよ」と水筒を渡す。そして、彼が飲んでいる間にサボテンの先端を切り取って来て、「僕たちはアロエ・ヴェラと呼んでる。痛いところに擦りつけるといい」と渡す(2枚目の写真、矢印)。最初は、“そんなもの要らない” フリをしていたトムだが、草むらに入って付けて出て来ると、「この妙薬で、大金が稼げるね」と急に元気になる。「トッドまでは、あと どのくらい?」。「急げば、日没の前に着くよ」。そして、2人は、長細い建物が遠望できるところまでやって来る(3枚目の写真)。「あそこに、トッドと仲間たちが隠れてるんだ」。

場面は、相前後するが、インディアンの部落では、ヴィネトゥとトムのティピの前で、チョウ・チが座って羽根で遊んでいると、父が「チョウ・チ」と呼んだので、びっくりして顔を上げる。チョウ・チは、立ち上がると、「ティピの中に入らないで下さい」と、止める。「なぜだ?」。「ヴィネトゥと少年は病気です」。それでも、父は中に入って行く。2人は一種のベッドのような物の上に、毛布を被って横になっている。父は、納得してテントを出ようとしたが、チョウ・チがうっかりナッツの入った籠に触って落としてしまい、大きな音を立てる。それにもかかわらず、2人がびくともしなかったことから、父はヴィネトゥの毛布をめくると(1枚目の写真、矢印はヴィネトゥらしき膨らみとトムの帽子)、中にあったのは折り畳んだ布。トムの方も、帽子の下は折り畳んだ布。父は、チョウ・チを、「ここで、何が起きている? 2人はどこだ?」と問い詰める。このシーンの後に、前節の1・2枚目の写真の場面が入る。そして、酋長は、ナギ・ニタ、イシ・カイ・ナイら3人を呼び、「ヴィネトゥは 白人の少年と共にリオ・サントに行った。彼は、チョウ・チのように、私の命令に逆らった。息子が戻るまで、我が民はこの地を離れん」と言う(2枚目の写真)。ナギ・ニタは、「私どもは、彼を見つけてきます」と誓う。

前々節の3枚目の写真の場面の後、3人のインディアンは、リオ・サントの町に入って行く。住民は怖がって家の中に入る。3人がシェリフの建物の前までくると、トッドの “お尋ね者への賞金の紙” が一杯貼ってあり、そこには5000ドルと書かれている。呑気にハーモニカを吹いていた部下は、3人を見るとびっくりしてイスから転げ落ちる。その音で、シェリフが出て来る。3人は、平和という意味で右手をL字型に上げ、ナギ・ニタが 「平和のもとに」と言う。「何かな?」。「イン・トゥ・シュナ〔酋長〕が、我々を送った。彼の息子、ヴィネトゥを探している。彼は、少年と一緒にこの町に向かった」。「トム・シルバーだな?」。「2人を見たか?」。「トム・シルバーは犯罪者だ。法から逃げる時、彼は他の少年と一緒に幌馬車を盗んだ。そのあと、2人は、神のお恵みを、崖から転落した。我々の目の前で」。「それは、どこ?」。「アクナ渓谷だ」(1枚目の写真)。ナギ・ニタは、イシ・カイ・ナイに、「酋長に伝言を。俺は渓谷に行く」と命じる。ここで、次節の1枚目の写真の場面が入り、そのあと、ナギ・ニタが崖の先端まで行き、谷底を見下ろす(2枚目の写真)。そして、馬に戻る途中で、草むらに落ちていたヴィネトゥの持ち物の一部を見つける。

一方、トッドの隠れ家には、2人の男が馬でやって来た。トム達は、それを建物の近くに隠れて見ている。トムは、「ブッチとフレディ。トッドの仲間だ」と教える。「たいした奴らじゃない〔Nicht die hellsten Kerzen auf der Torte(ケーキで最も明るいロウソクじゃない)〕」(1枚目の写真)。ヴィネトゥは、「あいつらに訊いてみよう」と言い出すが、トムは、「奴らは危険だ。もっといいやり方がある」と、ヴィネトゥを止める。トムの案は、建物の反対側にある小屋から隠れ家に通じる地下道〔万一の場合に逃げ出すための通路〕を通って、家の中に侵入しようとするもの。家の中では、ブッチが、黒くてドロドロした夕食を作っている。その食堂の真ん中に、逃げ道への入口が設けてあり、その板の隙間を通して、2人は中の様子を窺う。部屋の中では、筋肉の塊で脳ミソがないようなフレディが、ブッチに殴ってもびくともしないところを見せようとして、ブッチに顔に一発食らい フラフラしている。トムは、「あいつらに話させないと」と言い、ヴィネトゥは、妹からもらってきた “銀蛙のキス” を見せ、「眠ってる間、舌が緩む」と教える(2枚目の写真)。そして、料理に中に “銀蛙のキス” を入れる役目も ヴィネトゥが担うことに。ブッチが、夕食の用意ができたとフレディを呼ぶ間に、部屋に侵入したヴィネトゥは、フライパンの中に “銀蛙のキス” を全部入れ、へらで混ぜる(3枚目の写真)。そして、見つからないように左の矢印の扉を開けて、地下道に戻る。2人は同時に食べ始め、2人とも10秒以内に眠ってしまう。次にヴィネトゥは、緩んだ舌の内容を特定させるために、バッファローの鳴き声を真似た声を出す。それを聞いたブッチは、「うるさい、バカな野獣め。うんこする以外に何かできる? 悪魔の谷は、ここより臭えだろうな」と、情報を洩らす。これを聞いたヴィネトゥは、バッファローが悪魔の谷にいると確信する。

外の野原に出たヴィネトゥは、「これで、バッファローの居場所が分かった」と声を上げて喜び、それに呼応するように、トムが、「悪魔の谷か。僕、その場所知ってる。朝になったら、バッファローを解放しよう」と言う。それを聞いたヴィネトゥは、「僕の頭は君を信用したくなかったけど、僕の心に従ったんだ」と、打ち明け(1枚目の写真)、トムの腕に手を当て、「ありがとう」と感謝する。トムは、その腕に手を置き、2人の間に友情が生まれたことが分かる(2枚目の写真)。

2人は、そのまま悪魔の谷に向かうが、それを見ていた物がいる。一羽のカラスだ(1枚目の写真、矢印は2人)。これは、評議会の場で、呪術師としての長老が、「バッファローが見えない。影が邪魔をしている。鳥の形の影。鷲か… あるいは、恐らく… そう、大きなカラス」と予見していたことにつながる重要なシーン。しばらくしてトッドがそこに現われ、好きなカラスに話しかける。「やあ、可愛い子。何か俺に言いたいことがあるのか?」。カラスは、口をあけて、盛んに語ろうとする。それを見たトッドは、考え込む。翌朝、2人は 悪魔の谷に向かって馬を駆っている。そして、馬を降り、高台に登って行くと、眼下の窪地にバッファローがぎっしりと詰め込まれている。それを見た2人は、笑顔で見合う(2枚目の写真)。そして、バッファローを解放しようと、下に降りて行くと、目の前にトッドが座っていて、3人の配下の男に後ろを遮られる。トッドは、皮肉たっぷりに、「何という偶然。トム・シルバーが家族の元に帰ってきた」と両手を歓迎するように上げる(3枚目の写真)。ヴィネトゥは、トムを救おうと、「彼は、このことと何の関係もない。私が、彼をここに連れてきたのだ」と庇う。トッドは、「何と気高い」と言って笑う。そして、「トム、俺がどれほどがっかりしたことか。あれほど面倒見てやったのに」と、いたぶり始める。

すると、トムは、「ちょっと待ってよ。がっかりしたのは、僕の方だ。もう、二度と会えないと思ってた」と、笑顔で言う。面食らったトッドは、「お前、何言ってる? バッファローを解放するために、そいつをここに連れて来たんじゃないか」と、ずばり指摘する。トムも負けてはいない。「何、ばかげたこと言ってんの? あんたが、バッファローを隠そうとしてるって聞いたから、僕はこいつに接近したんだ」(1枚目の写真)「こいつが、バッファローを解放するのをやめさせるためにね。聞いてよ、トッド。僕が あの時、へましたことは分かってる。だから、失敗を償いたかったんだ。僕は、こいつを、あんたへのプレゼントとして、ここに連れて来たんだ。あんた、プレゼントが好きだから」。「だが、いったいこいつをどうしたらいい?」。トムは、ヴィネトゥの首から護符を引きちぎって取ると、「これが最初のプレゼント」と言って渡す。「金だな」。ヴィネトゥは、トムを 「裏切り者。信じてたのに」と罵る。トムは、「心なんか信じるからさ。何てバカなんだ」と言い返し、ヴィネトゥは怒り心頭(2枚目の写真)。トムは、さらにトッドに自慢する。「ところで、こいつは、ただ者じゃないんだよ。アパッチの酋長イン・トゥ・シュナのガキのヴィネトゥさ」。「酋長のガキなのか。悪いな。お前らは、住んでた土地を離れにゃならん。それだけじゃない。俺は、お前らの聖なる洞窟にある金が欲しくてたまらんのだ」(3枚目の写真)。そして、あっぱれなトムに対し、「寂しかったぞ、トム」と暖かい言葉をかけ、トムは、「家族とまた一緒になれて、幸せだよ」と、トッドの言葉に感謝する。ヴィネトゥは、すべての武器を取り上げられ、トッドの隠れ家に連れて行かれる。

ヴィネトゥは両手を縛られ、隠れ家の入口脇の物置に監禁される。食堂では、トムが食物にかぶりつき、「家の味が最高だ」と笑顔で言い、トッドに可愛がられる(1枚目の写真)。ヴィネトゥは絶望のあまり、気力も失せて座り込む(2枚目の写真)。

すると、隠れ家のドアが開けられ、食事中の全員が銃を取り出す。そこに現れたのは、何と、ナギ・ニタ。トッドは、事情を知らない他の連中に、「これはこれは。何と素敵な訪問。俺たちの友だち、ナイアガラだ〔ナギ・ニタと記憶できない〕」。トムは、ナギ・ニタに見つからないよう、うつむいて帽子を手で押さえる。ナギ・ニタは、「俺は取り決めを守った。俺たちは先祖の土地を離れる。約束の銃が欲しい」と言う。それを物置の木の隙間からヴィネトゥが、“この卑怯者” という面持ちで見ている(1・2枚目の写真)。トッドは、「あんたは銃を手に入れる。それが取り決めだ。だが、その前に、聖なる洞窟から金を頂戴しないとな」(3枚目の写真、矢印はトム)。ナギ・ニタは、さらに、「酋長の息子ヴィネトゥが死んだ。保安官から逃げる途中、崖から落ちた」と話す。トッドは、「そいつは悲惨な話だな」と言うと、立ち上がってナギ・ニタの前に行き、「それが、どうしたって言うんだ?」と訊く。「ヴィネトゥの死は、土地が呪われていることを示している」。ここで、崖で見つけた物を見せ、「この証拠をイン・トゥ・シュナに持って行けば、彼はティピを畳むよう命じるだろう」。それを聞いたトッドは、「ハレルヤ」と、その考えを褒める。「悲劇にも、良い面があるってことだ。あんたは部落に戻れ。そして、無事に新しい土地へ」。ナギ・ニタは、いつ銃がもらえるのか、ちっともトッドが言わないので、「イン・トゥ・シュナは良き酋長だが、青白い顔〔白人〕が平和を保たないことに 気付いていない。青白い顔の武器から俺たちを守る方法は一つしかない。火器が必要だ」と 態度をはっきりさせるよう要求する。それに対し、トッドは、訳の分からない理屈を並べて、言質を取られるのを避け、最後に立ち上がって、「俺たち、クロウ〔カラス〕一家は、誉れ高き男たちだ」と天下の盗っ人が破廉恥な嘘を付き、握手の手を差し出す。ナギ・ニタは、差し出された手を無視して立ち去る〔ナギ・ニタは、恐らくトッドにバッファローを隠すよう勧め、さらに、トッドが「聖なる洞窟から金を頂戴」するのも容認しているので、明らかに最低の裏切者〕

ナギ・ニタが、いなくなると、トッドは 「ブッチとフレディ、ヴィネトゥを始末しろ」と命じる。ブッチが、「『始末』って、要は、何すればいいんで?」と訊く。「トム、奴に説明してやれ」。「冷たい場所〔トッドは 「墓の中」だと思ったに違いない〕」。ブッチとフレディは、ヴィネトゥを隠れ家から連れ出し、銃を取り出し、撃ち殺そうとする。その時、トムが現われ、「あんたら、こいつを撃つつもりなのか?」と尋ねる(1枚目の写真)。ブッチ:「だけど、トッドが…」。「僕は、そんなこと言わなかった。『冷たい場所』は、そんなもんじゃない」。ブッチ:「どうすりゃいい?」。フレディは 「からかってるんだ」と言って、銃を構える。「いいさ。撃てよ。僕は構わないよ。トッドは、あんたの命令違反を許してくれるさ」。「どうすりゃいいんだ、トム?」。「簡単さ。崖から(冷たい)川に落しゃいい。ボチャンとね。そうすりゃ、こいつの魂は外に出られないから、あんたらの前に化けて出て来ない。常識だろ」。2人は、「知ってるとも」。「俺たちが、それほどバカだと思うか?」と、バカさ加減をさらけ出す。そして、ヴィネトゥを連れて渓谷まで連れて行くが、彼が暴れたので、頭から袋を被せる。その頃、トッドは3人の手下と一緒に、アパッチの部落に向かう。崖の端に連れて来られたヴィネトゥは(2枚目の写真)、そのまま突き落とされる。

1枚目の写真で矢印は、ブッチとフレディ、黄色の円の中は、落ちて行くヴィネトゥ、その下には、深い淵がある。両手が縛られているので、水中に落ちたヴィネトゥはそのまま水中深くに沈んでいく。すると、そこに現れたのがトム。ヴィネトゥの体を抱くと、そのまま一緒に上を目指して泳ぐ(2枚目の写真)。そして、水面に達すると、今度は岸に向かって泳ぎ、ヴィネトゥを引っ張り上げる。袋を取り、手を縛ったロープを切り、「ヴィネトゥ、死んだふりしてるなら、やめろよ」と言うが、目は閉じたまま。そこで、何とか生き返らそうと、胸を何度も押す(3枚目の写真)。

それでも、反応は一切ない。トムは、「お願い、息をして」と話しかけ、顔を胸に付けて 「ヴィネトゥ、わが友」と、すがるように言うと、突然、ヴィネトゥが水を吐いて、咳きながら体を起こす。トムは笑顔で、「生きてるんだ。信じられない。怖がらせちゃったけど、もう大丈夫」と言う(1枚目の写真)。さらに、「ごめんね。君を裏切ることが、たった一つのチャンスだったんだ。あいつの手下のふりをしないといけなかったから。そうしないと、あいつは…」。「もう、何も言わなくていい。僕の心の声は正しかった。よくやってくれた」(2枚目の写真)。トム:「バッファローは後で解放すればいい。まず、部落に行かないと」。ヴィネトゥ:「トッドが、聖なる洞窟を冒涜する前にね。馬はどこ?」。「この先。ここで待ってて」。そう言って、立ち上がろうとするヴィネトゥを止めると、トムは、石を2つ拾って、前にヴィネトゥがやったように石を独自のパターンで打ち鳴らす(3枚目の写真、矢印)。すると、黒馬が2頭走って現れ、2人は笑顔になる。

一方。部落に戻ったナギ・ニタは、ヴィネトゥの “遺品” を酋長に見せる。酋長は、「まずは妻。今度は、息子のヴィネトゥか」と、心から悲しむ(1枚目の写真)。酋長は、「私たちは、ここを離れよう」と決断する。部族民は、ナギ・ニタの指示で、ティピを畳み始め、それをトッドが小さな望遠鏡で見て、「これで金への道が開けた」と、手下に言う。ティピで、チョウ・チが 兄の “遺品” を見ていると、そこに ナギ・ニタが入って来て、「時間を無駄にしないように」と、ティピを早く畳むよう催促する。チョウ・チは、「私の兄は生きています。そう感じるのです」と言う。ナギ・ニタは、チョウ・チの前にしゃがむと、「俺たちは強くなり、民の将来を考えないと」と言い、チョウ・チは頷く。畳まれたティピは、それぞれの馬に牽かれ、部族民が旅立ちのために一列に並んでいる。酋長は、長老に対し 「あなたは、本当にここに残るのですか?」と尋ねる(2枚目の写真)。長老は、「あなたは、民を、新しい土地へと導き、平和に暮らせるように務めるのです」と、最後の言葉をかける。かくして、馬に乗った酋長を先頭にして、部族は移動を始める。3枚目の写真は、一番多くの人が映っている場面。

部族が出発すると、すぐにトッドが現われる。洞窟に向かおうとしてトッド達に気付いた長老は、「あなたたちは、私たちの土地で何をしているのです?」と質問する。全員がいなくなったと思っていたトッド達は、その声にびっくりするが、相手が老人だと分かると、「これはこれは。ここで、何をしてるかだと? いらぬお世話だ。ここはもう、お前らの土地じゃない。俺たちのだ」と言うと、「あの女を縛れ」と手下に命じる。その頃、チョウ・チは後ろを振り向いた時(2枚目の写真)、最後尾にいたナギ・ニタが部落に戻って行くのを見て(3枚目の写真、矢印)、怪しいと思って跡をつける。ヴィネトゥとトムも、馬を全速で走らせて部落に向かう。

トッドの目的を察した長老は、「あなたたちは報いを受けるでしょう」と警告する。「私たちの戦士が見つけ、 仇を討ちます」。「そりゃ楽しいね。ヴィネトゥも、永劫の狩場へと旅立つ前に、全く同じことを言った」と言いつつ、彼がつけていた護符をわざと見せる〔これで、ヴィネトゥは渓谷に落ちて死んだのではなく、トッドが護符を奪って殺したんだと長老は思う〕。しばらくして、洞窟の中を見て来た手下がやってきて、「ナギ・ニタを待たないと。洞窟の中は迷路です。金なんか、とても見つかりません」と報告する。トッドは、ナギ・ニタなど どうでもいいので、長老に、「洞窟の中を案内してくれよ」と言い(1枚目の写真)、「死んだ方がましよ」と言われてしまう。そこに、ナギ・ニタが現われる。「おお、遂に来たか。俺たちの忠実な友よ」。ナギ・ニタは、トッドの前まで来ると、「約束した武器はどこだ?」と訊く。トッドが、「銃は…」と言った時、手下の1人が、チョウ・チの吹矢で倒れる。チョウ・チは、「手を上げなさい!」と言うと、吹矢を口に咥えたまま 2人の悪漢の前にジャンプする。背後から、残りの1人がやって来たので、長老が、「チョウ・チ、気を付けて」と叫ぶが、遅すぎて後ろから捕まえられる。自分の前に連れて来られたチョウ・チに、トッドは、「小さくて可憐で勇敢な女の子。そんなことは似合わんぞ」と言うが、その瞬間に足で股を蹴り上げられる(2枚目の写真、矢印)。それを見て、襲いかかろうとした、さっきの3人目に、今度はナギ・ニタが襲いかかり、「チョウ・チ、助けを呼んで来い!」と叫ぶ。しかし、起き上がったトッドが拳銃を空に向かって撃つと、命の危険を感じたチョウ・チは止まり、3人目の男に捕まり、ナギ・ニタはトッドに拳銃で殴り倒される。ナギ・ニタに危険が及ぶのを見た長老は、洞窟内の案内を了承し、それを聞いたトッドが、実に嫌らしい笑顔を見せる(3枚目の写真)。

トッドは、長老とチョウ・チを先に行かせ、自分と手下1人を連れて中に入って行く。もう1人は外の見張り、残りの1人はチョウ・チの吹矢で倒れたまま。トッドが、洞窟に入る時、間に合って到着したヴィネトゥとトムが、それを目撃する。トムは、チョウ・チが落としていった吹矢を拾うと、口に咥え(1枚目の写真)、外の見張りの首筋に命中させ、外には悪漢が誰もいなくなる。ヴィネトゥは、気絶したままのナギ・ニタのナイフを奪うと、長老と一緒だったインディアンの縄を切り、トムと一緒に洞窟の中に入って行く。一方、部族の長い行列の先頭を進んでいた酋長は、娘の姿がないので、列の後ろに向かって探していくが、どこにも姿がない。次の場面は洞窟の中。先ほどの順番で4人が歩いている(2枚目の写真)〔迷路とは思えない〕。手下がトッドから離れてウロウロしていると、トムの吹矢に倒される。そして、3人はとうとう金の岩の前に。それを見たトッドは、願いが叶って狂喜のあまり、背後のことなど忘れてしまう(3枚目の写真)。

背後では、長老とチョウ・チの前に、ヴィネトゥとトムが現われる。兄が生きているのを見て満面の笑みをたたえたチョウ・チは(1枚目の写真)、兄に抱き着くと、「知っていたわ」と、生を確信していたことを告げる。チョウ・チは、次にトムに抱き着き(2枚目の写真)、兄を助けてくれたことを感謝する。その時、トッドが、「壁全体が金で覆われてる!」と叫ぶ声が聞こえてきたので、トムが先に退治に行く。トムは、トッドの背後で咳払いし、トッドは慌てて銃を向けるが、トムだと分かって、見つけた物の自慢を始める。「全部、俺のもんだ。大好きな息子にも分けてやる」。トムは、インディアンの斧を取り出すと、「僕は、お前なんかの息子じゃない」と言うと、トッドの頭上の括(くび)れた岩に向かって斧を投げるが、岩は落ちて来ない。それを見たトッドは、笑いながら、「この、チビで、生意気で、卑劣な…」と言いつつ、拳銃をトムに向ける。その時、ようやく、岩がトッドの頭の上に落ちて来る。悪人は、その場で倒れるが意識がなくなった訳ではない。トムが、嬉しそうに後ろを向いてヴィネトゥを呼んでいると、落としたピストルを何とか拾い、倒れたままトムに狙いを付ける。そして、「トム、この裏切者」と言って引き金を引こうとした時、反対側から走って来たヴィネトゥが、矢で拳銃を撥ね飛ばす(3枚目の写真、黄色の矢印は拳銃、空色の矢印は飛んでくる矢の方向)。

長老とチョウ・チが洞窟から出て来ると、娘を探しに部落まで戻って来た酋長と顔を合わせる。そして、「お前まで失うのが怖かった」と言って抱きしめる。すると、チョウ・チは、「私が正しかった」と言う。「何が、正しかったのだ?」。チョウ・チが振り向くと、ヴィネトゥが洞窟から出て来る。死んだと思って悲観していた息子が生きていたので、酋長は感激し(2枚目の写真)、強く抱きしめる。最後に、トムが、トッドともう一人を縛って、洞窟から出て来ると(3枚目の写真)、2人が酋長に抱き締められているのを見て、微笑む。そして、トッドの首を3人の方に向けると、「見ろよ、あれが家族なんだ。この愚か者」と言う。それからかなりの時間が経過し〔シェリフもいる〕、部族は全員戻ってきている。そして、そこに、解き放たれたバッファローの群れが戻って来るのを長老が感じ取り、部族は歓呼の叫び声をあげる(3枚目の写真)。

酋長が、部族の前で演説する。「ナギ・ニタは、銃が平和をもたらすと信じていた。しかし、それは間違いで、逆は真なりであった」〔なぜ、ナギ・ニタが許されたのか分からない。先に書いたように、彼は トッドにバッファローを隠させ、トッドが聖なる洞窟の金を盗むのを黙認した。その罪はもの凄く重く、最低でも部族からの追放に値すると思うのだが…〕。酋長の話は続く。「トッドとその一味はシェリフに引き渡された」。ここで、シェリフは、感謝を込めて頭を下げる〔賞金の5000ドルは渡したのだろうか?〕。酋長は、次いで、ヴィネトゥ、トム、チョウ・チの3人を自分の前に来させる。ヴィネトゥは、トムに帽子を取るよう合図する。「ヴィネトゥ、わが息子。私は そなたを不当に扱った。戦士は功績によって評価される。ありがとう。バッファローが戻った」。ここで、謙虚なヴィネトゥは、「名誉は他の人のものです。私と部族の命を救ってくれた人」。そう言うと、トムの方を向く。「僕が? まさか。半分ですよ。僕たちいつも一緒だったから」(1枚目の写真)。酋長は 「そなたは、いつか、偉大な酋長になるであろう」と言い、ヴィネトゥに向かって頭を下げ、ヴィネトゥを含めてインディアン全員が同じように頭を下げる。そして、歓声。そこに、酒場の女主人のエリーが現われる。酋長は、「トム、見ろ」と小声で教える。トムが振り返ると、エリーが笑顔で手を振る(2枚目の写真)。それを見て、トムも笑顔になる(3枚目の写真)。

ここで、酋長が咳払いしたので、3人は前を見る。酋長は、「トム・シルバー。偉大なる精霊が、そなたをここに遣わした。肌の色が違うからといって、信用できないと決めつけるなという啓示として。私たちの目は欺かれても、心は欺かれない。私たちは、そなたから。大きな恩義を受けた」(1枚目の写真)。そう言うと、酋長はトムに向かって頭を下げる(2枚目の写真)。それに対して、トムを含めた部族全員がまた頭を下げる(3枚目の写真、矢印はシェリフとエリー)。シェリフは、エリーに、「あんたは、あの子を、一緒に連れて行きたいんだね?」と訊き、笑顔で 「ええ、そうよ」と言われると、「何も問題が起きなければいいんだが」と意地悪な心配。エリーは、「まあ、シェリフったら」と言って、シェリフの胸をポンと叩く〔これで、トムはエリーの養子。最悪でも、里親〕

トムは、ヴィネトゥに護符を返す。護符を首にかけると、ヴィネトゥはトムを、部落を見下ろす丘の上に連れて行く。そして、ナイフを取り出し、自分の腕を切る(1枚目の写真、矢印)。ナイフを渡されたトムもナイフで腕を切る(2枚目の写真、矢印)。そして傷口を合わせると、「血を分けた兄弟」と呼び合う(3枚目の写真)。そして、ヴィネトゥが 「兄弟よ、僕らの火には、いつも君の場所がある」と言い、トムは 「また、会おう」と応じる〔リオ・サントスの町は近いから、何度も会いに行ったと思いたい〕

   の先頭に戻る              の先頭に戻る
  ドイツ の先頭に戻る          2020年代前半 の先頭に戻る